■ 初期中絶の手術方法「掻爬法」と「吸引法」の違いは?
中絶手術と一口にいっても、手術方法はひとつではありません。
妊娠週数によって初期中絶と中期中絶とに大きく分けられるほか、初期中絶はさらに2種類の手術方法に分けられます。
今回は、特に初期中絶で行われる手術方法に焦点をあて、それぞれの特徴についてご紹介します。
【掻爬法または吸引法で行われる初期中絶】
初期中絶手術とは、妊娠11週6日までに行う手術のことをいいます。
一方の中期中絶手術は、妊娠12週0日~21週6日までに行う手術のことを指しますが、初期中絶の対象となる妊娠週数であっても、胎児の体重が500gを超える場合は、中期中絶の対象となることがあります。
初期中絶では、「掻爬法(そうはほう)」もしくは「吸引法」のどちらかの手術方法がとられます。
胎児が大きくなればなるほど、中絶手術が与える母体への負担は大きくなってしまいますし、中期中絶ともなると、人工的に陣痛を起こして分娩するかたちでの手術となり、強い痛みも伴います。
中絶手術を行うのであれば、できれば早めに決断して、初期中絶手術を受けるほうが望ましいでしょう。中絶手術を受けられるのは、一般的に妊娠5週を過ぎたあたりからになります。
ただし、胎児がまだ小さく、子宮口が開きにくいことも多いため、妊娠6週目まで手術を行わない方針の病院もみられます。
【初期中絶における2つの手術方法の違い】
掻爬法と吸引法の違いについて、詳しくみてみましょう。
●掻爬法とは
掻爬法は、日本の産婦人科において主流となっている手術法です。
掻爬法では、スプーンのような細長い器具、もしくは胎盤鋏子と呼ばれる特殊なハサミ状の器具を使い、子宮内の胎児や付属物を母体の外に掻き出します。
経験豊かな産婦人科医が手術を行う必要がありますが、掻爬法では子宮内膜を傷つけることなく、出血量を最小限にとどめることができるといわれています。
●吸引法とは
日本では、主に胞状奇胎(ほうじょうきたい)のような特殊な場合に用いられることが多い手術法です。
強力な吸引器を用いて子宮の中の胎児を吸い出します。掻爬法よりも短い時間で手術できるため、母体への負担が少ないといわれています。
無痛で安全性が高いという理由からWHOが推奨していることもあり、最近では吸引法を用いる病院も増えてきています。どちらの手術方法においても、術前に子宮の入り口を広げる前処置を行います。
一般的には、「ラミナリア桿(かん)」と呼ばれる海藻からつくられた細い棒、もしくは「ダイラパン」というスポンジを固めたような器具を挿入して、体内の水分を吸わせ膨張させることでゆっくりと押し広げていきます。
【無痛中絶手術で痛みを抑えることも】
どちらの手術方法においても麻酔が使用されるため、基本的に術中に痛みを感じることはありません。
ただし、子宮の入り口を広げる前処置では、痛みや違和感を伴うことがあります。痛みが苦手という人は、「無痛中絶手術」を行っている病院を選ぶという方法もあります。
無痛の定義は病院によって異なりますが、一般的には「麻酔投与などの注射の痛み以外の手術による痛みを感じない」ことが基準になっているようです。
子宮の入り口を広げる前処置を行わない、手術に用いる麻酔の種類や投与するタイミングを調整するなどといったことで痛みの要素を取り除いていきます。
麻酔の効き方には個人差があり、一定の量を投与しても必ずしも痛みを感じないわけではありません。
自分に合った麻酔の量に調整してもらうことで、麻酔が効きにくいといった不安も抑えられるでしょう。
★どちらの手術方法が適しているか医師と相談を
妊娠週数によっては、掻爬法と吸引法が併用されることもありますし、妊娠10週目までは吸引法で手術するという方針の病院もあります。
まずは、手術を受ける自分自身が、それぞれの手術方法について知識を深めたうえで、どちらの方法が適しているのかを医師としっかり相談することが大切です。