中絶する理由は、人によって異なるものです。
心身のトラブルを抱えている場合や金銭上の問題など、さまざまな理由が考えられます。

非常にデリケートな部分でもあり、詳しく聞かれたくないと思う人も多いのではないでしょうか。

だからこそ気になるのが、病院での中絶理由の伝え方です。どこまで詳しく伝えるべきか悩んで受診が遅れると、母体への負担が大きくなってしまいます。

そのような事態を避けるためにも、中絶理由の伝え方について把握しておきましょう。

■中絶手術の条件とは

中絶手術は「母体保護法」に基づいて実施されます。

母体保護法は母体の健康を守るための法律であり、医師による説明の義務や同意書の提出などが細かく定められています。

中絶手術を実施できる条件についても明記されており、その条件に合っているかどうかを医師が確認しなければなりません。

そのため、病院での診察時には、中絶を選択した理由について医師から質問されます。

では、どんな条件に合えば手術を受けられるのでしょうか。母体保護法で定められているのは以下の通りです。

①妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの

②暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの

以上2点のどちらか、もしくはどちらにも当てはまる理由があれば、中絶手術が可能になります。

つまり、診察では、この2つの条件に該当するかどうかを確認されることになるのです。

■病院にはどこまで伝えるべき?

妊娠発覚後、すぐに中絶を決めたとしても、まずは診察を受けなければなりません。

診察で正常な妊娠であることを確認した後、医師から「出産するかどうか」について問われます。

受付時や予約時に伝える場合もあるようですが、最終的な意思が確認されるのは、やはり診察時。

ここではじめて中絶の意思を伝え、その理由を話すことになります。

いざ話すとなると、どこまで話せばよいかわからず、不安になってしまうかもしれません。

けれど、医師が確認したいのは、母体保護法で定められた条件に合致するかどうかです。

そのことが確認できれば、細かい事情を聞かれることはほとんどありません。

ただし、理由とは別に、手術にあたって必要な質問もあり、自身や家族の病歴を聞かれたり、費用面や同意に関して確認されたりすることがあります。

手術を受けるために必要な質問には、きちんと答えるようにしましょう。

特に、持病がある人は、それまでの病歴を確認したり、診断書が求められたりする場合もあります。

医師の指示に従って、必要な準備を行いましょう。

病院によっては、中絶に悩む人を対象としたカウンセリングを行っているところもあるようです。

自分の気持ちや状況を話すことで、不安の解消につながることもありますので、負担にならない範囲で利用するとよいでしょう。

■中絶の同意書に「理由」は必要ない

診察以外で気になるのが、「同意書」の存在です。

中絶手術には同意書が必要ですが、そこに書かなければならないのは、本人やパートナーの氏名のほかは捺印程度です。

母体保護法の条件に合致するかどうかチェックすることもあるようですが、同意書に細かい理由を書く必要はありません。

また、病院に伝えた理由が何であれ、その状況を証明するよう求められることもありません。

中絶理由を伝える目的は、あくまでも母体保護法に定められた条件に合っているかどうかを確認するためであり、細かい事情を話したり記入したりしなくてもよいことを覚えておきましょう。

■中絶の理由は人それぞれ

望まない妊娠で中絶を希望するとしても、そこに至る経緯は人によって異なります。

デリケートな部分について話したくないのであれば、手術の条件に合っているかどうかを伝えるだけで十分だといえるでしょう。

ただし、手術に必要な情報を提供することはとても大切です。医師からの質問には丁寧に対応して、手術に備えましょう。