Dr.ネルソンの「医学&タメになる」授業
和(なごみ)クリニック院長、精神科医である 徳山まどか先生と、「認知症」についてお話します。
アルツハイマーと認知症の違い
前回は、認知症のことを詳しく教えていただきました。その後、視聴者からの質問の中で認知症とアルツハイマ―はどう違うの?という質問がありました。同じものなんですか?
認知症というのは病気でいうと、肺炎ぐらいの広い病名です。肺炎の原因でいうと肺炎球菌だったり、流行りのコロナやインフルエンザだったり、色々あるんですが、それと同じで認知症の中でも原因になる物質によって、いろいろ種類が分かれてて、その一つがアルツハイマーです。
なるほど。
じゃあ認知症が何によって引き起こされているか、それぞれ原因があるんですね。
そうです。
アルツハイマー型から、脳梗塞がたくさんある人だったら「脳血管性認知症」、「レビー小体型認知症」というのもあるし、「前頭側頭型認知症」というのもあります。また、昔浴びるほどお酒を飲んでましたっていう「アルコール性認知症」というのもあるし、あとは睡眠時無呼吸とかをずっとやってて、「低酸素にずっとなってる人の認知症」もあったりとさまざまです。
認知症というのは、脳の機能がだいぶ衰えてきた状態ですが、その容疑者がいっぱいいるんですね。その中でも一番罪深そうな犯人がアルツハイマーなんですね。
それじゃあ、認知症の方の中で何%がアルツハイマーのせいですか?
6割から7割ぐらい。
大体65%ぐらいですね。
半分以上?!
アルツハイマーは何で起きるんですか?
アルツハイマーは「アミロイドβ」というたんぱく質のゴミみたいなものがだんだん脳に溜まっていって、ある一定の量になったら発症すると言われています。
脳みその中にもゴミがあるんですか?誰かゴミを掃除してくれへんかな?
そのゴミを掃除してくれる薬を、今みんなで一生懸命開発してるんですけど、なかなか治験がうまくいかなくて、残念ながら現時点で根本的に治す薬はないんです。
この10年ぐらいは新しい薬は出てきていないです。今は、日本も世界も共通で4種類しかお薬がないんです。脳の神経細胞の伝達を促進するようなお薬です。
伝達をよくすれば、ゴミは出なくなるんですか?
ゴミは溜まっていきます。ゴミが溜まっていくと、脳の細胞がどんどん死んでしまって神経と神経の伝達がうまくいかなくなるんだけど、残っている神経の細胞をなんとかうまくしようとするのが、今あるお薬ですね。
なるほど。そういうことなんですね。
でもそれぐらいしかできないんですね。
そうなんです。
だから病院に行って診断してもらい、お薬をもらいました!で終わりではないんです。認知症の治療はお薬だけではないんです。認知症の方が抱える問題は、社会的にも心理的にも、経済的にも色々な問題が関係してきます。しかも本人だけの問題じゃなくて、介護というものが発生するので家族も一緒に考えていかないといけません。だから、お薬だけ飲んで家でじっとしているっていうんじゃなくて、薬を飲みながら体を動かす・いろんな人と社会的に刺激を受けるということが大事で、介護サービスもぜひ使ってほしいと思います。
なるほど。
風邪をひいたような単純なものではないんですね。薬を飲んで、2,3日で元気になるものではないということですね。
そうですね。
風邪薬は飲むけど、他にも、おいしいものを食べましょう。励ます人を作りましょう。心地いい環境を用意しましょう。そういうことが大事になってきます。病気も年単位で進んでいくので、長期戦になります。だから家族にもいろんな気持ちが出てくるので、その家族を支えないといけないですね。
案外「治療」と一言で言っても、とても大変なことなんですね。
包括支援センターとは
病気だけを見るのではなくて、すごく包括的に考えないといけません。
その人を支えていく、良い刺激を与える、生活をサポートしていくとなると、チームのようなものが必要になりますよね。
そうですね。
昔のように下町で、近所の人と行き来があるような環境が今は少ないですからね。そのために、包括支援センターというものがあります。そこにまず相談に行ってください。
各市町村ごとにあるんだろうけど、分からなかったら市役所か区役所に行けばいいですね。これを聞いて視聴者の方も少し安心される方もいらっしゃると思います。
あと、皆さんが払っている介護保険料は65歳になると、使える立場になります。介護保険制度を使用したいという申請を包括支援センターへ行って利用申請をします。その際に、病院で診断書を書いてもらわないといけません。介護保険を申請して認定がおりたら、ケアマネージャーさんがついて、困っていることのサポートをマネジメントしてくれます。そして、地域でその人を支えてくれるシステムを作ってくれます。
そんなありがたいシステムがあるんですね。日本はいい国ですね。
まずは、包括支援センターに一度ご相談ください。本日はありがとうございました。