妊娠に気付いて医療機関を受診したところ、双子だと告げられることもあるでしょう。

1人の胎児がおなかにいる単胎妊娠と比べ、双子の妊娠はリスクが高いといわれます。


では、もし中絶を選択する場合は、どのような違いがあるのでしょうか。

双子の妊娠と中絶手術について、単胎との違いを中心にお伝えします。


■双子の妊娠リスクは膜性で決まる

胎児が双子の場合を「双胎妊娠」といいますが、双胎妊娠であるかどうかは、一般的には妊娠6週以降の超音波検査で判明します。

双胎妊娠は、まず「一卵性」と「二卵性」とに大きく分けられます。

一卵性とは、1つの卵子と1つの精子が受精して、受精卵が分裂の途中で2つに分かれたもの。

二卵性は、2つの卵子がそれぞれ精子と受精して、着床したものを指します。

実は、双胎妊娠におけるリスクの高さは、一卵性か二卵性かという「卵性」ではなく、「膜性」によって決まります。

胎児は必ず「絨毛膜」と、さらにその内側にある「羊膜」という2重の膜に包まれていますが、その膜のパターンは、双子の場合は主に3つのタイプに分けられます。

この膜のパターンによって、子宮内でどのような部屋割りになっているのかがわかり、胎児に起こりうるリスク度を測ることができるのです。早速、それぞれの特徴をみていきましょう。


■膜性によって変わる双胎妊娠の種類

・二絨毛膜二羊膜(DDツイン)

母体と胎児を結ぶ胎盤を1人ずつもっていて、絨毛膜も羊膜も完全に分かれているタイプ。

胎児は各自で栄養や酸素、血液を受け取っており、双胎妊娠のなかでも比較的リスクが低いといわれています。

二卵性の双子、または受精後48時間以内に分裂した一卵性の双子がこのタイプになります。


・一絨毛膜二羊膜(MDツイン)

羊膜はそれぞれもっていますが、ひとつの胎盤を2人で共有しています。

受精後3〜8日頃に分裂した一卵性の双子がこのタイプになります。


・一絨毛膜一羊膜(MMツイン)

一卵性の双子で、羊膜も胎盤も2人で共有しており、胎児の間に膜がない状態です。

受精後9〜13日後に分裂した一卵性の双子がこのタイプになります。

双胎妊娠のなかでも珍しいパターンで、リスクが高く、妊娠中は注意が必要だといわれています。

先ほどお伝えしたように、双胎妊娠のリスクは膜性によって大きく変わります。

単胎妊娠のリスクを1とすると、二絨毛膜二羊膜は3倍、一絨毛膜二羊膜は10倍、一絨毛膜一羊膜のリスクは100倍ともいわれています。

そのため、妊娠初期の段階で膜性診断を適切に受けておくことがとても大切なのです。


■双子を中絶する場合、手術方法に違いはある?

双胎妊娠のリスクが高いことを考えると、中絶手術にも影響があるのではと不安になるかもしれません。

双子を中絶する場合、手術方法そのものに特に大きな違いはありません。


ただし、胎児が2人になるので、その分時間がかかります。

妊娠12週未満で行われる初期中絶の場合は、スプーンのような器具を使って胎児や胎盤などを掻き出す「掻爬法(そうはほう)」、もしくは掃除機のような器具で吸い取る「吸引法」が用いられます。

妊娠12週以降22週未満の中期中絶では、人工的に陣痛を起こして流産させる「人工死産」の方法がとられます。


■中絶にかかる費用は高くなる?

手術方法は単胎妊娠と同じですが、費用は病院によって異なるため確認が必要です。

単胎妊娠の場合、初期中絶は10〜20万円程度、中期中絶は30〜50万円程度かかるのが一般的です。

中期中絶手術を行う際、条件を満たした場合に限り、国から「出産一時金」が支払われることがあります。

双胎妊娠だと2人分が支給されますが、中期中絶となるとリスクが高くなるうえ、死亡届や火葬許可証の手続きも必要になります。

母体への負担を考えても、中期中絶を待たずに早めに手術を行うほうがよいでしょう。


■母体に負担をかけない選択を

中絶に至るまでにはさまざまな経緯があり、すぐに決断するのが難しいこともあるでしょう。

しかし、双子を妊娠した時点で、すでに単胎妊娠より母体に負担がかかっていることを忘れてはいけません。
負担を最小限に抑えるためにも、なるべく早めに決断することが望まれます。